わが子に「勉強しろ!」と言うより、買い物中に「クイズ大会」をしよう 学校の授業より頭がよくなる
ゲームばかりしている子も、勉強嫌いの子も、自分から勉強するようになる……。中学受験専門塾・伸学会の菊池洋匡代表と、秦一生氏による共著、『「やる気」を科学的に分析してわかった小学生の子が勉強にハマる方法』は、わが子を「勉強好き」にするメソッド満載の一冊だ。たとえば彼らが勧めているのは、親子で買い物をしながら「クイズ大会」をすること。これが学校の授業より役に立つという。どういうことか、その秘密に迫った。
理科、社会が得意になる
勉強は塾や家で机に向かってするものだ。多くの子も大人も、そう考えています。
しかし、これは残念な誤解です。少なくとも私たちが専門とする中学受験では、机以外の場所で吸収する学びが、模試での成績や受験の合否に大きく影響しています。
そして、それが中学・高校・大学といった、その先のより深い学びにもつながっていくのです。それには、3つの理由があります。
難関校の中学入試問題は難しいとよく言われます。確かに算数は大人でも苦労しますし、国語の読解も難解なものが多いです。
しかし、理科、社会においてはそのイメージは間違っています。理社で理解できないほど難しい内容が聞かれることはレアケースで、ほとんどの場合は、出題範囲が広すぎて覚えきれていないだけなのです。「理解できない」と「知らない」は全然別物ですよね。
要するに、理社の勉強は覚えるのが大変なだけ。じゃあ、覚えるにはどうしたらいいか?
それは、もちろん回数をこなすのが一番です。
一般的な塾のカリキュラムは、第1回「九州地方」、第3回「農業」、第5回「水溶液の分類」などとなっていて、週ごとにその内容を覚えきらねばなりません。しかも、この量が結構多いのです。難しいわけではないが、とにかく多い。何度も繰り返す時間的な余裕がありません。そこで、オススメしたいのがスーパーでのクイズ大会です。
いずれは、各地方の農作物は覚えなければいけないとわかりきっています。そして、それらはスーパーに行けばゴロゴロ並んでいます。「このピーマンはどこの都道府県のものでしょう?」「この豚肉はどこの……?」、こういったクイズをお子さんと買い物に行くたびに出題していれば、自然といろいろなものの産地を覚えていきます。
入試では生産高の順位を聞かれることもあるので、せっかくならそれも覚えてしまいたいですね。安心してください。あなたが答えを覚えている必要は全くありません。
「ピーマンの生産高1位はどこでしょう?」と子どもにクイズを出した後で、答え合わせは「HEY! SIRI!」「OK! グーグル!」とスマホに呼びかければいいだけです。お子さんに「知らないことは調べる」という姿を見せましょう。
それにも飽きてきたら、「今日は北関東の食材で料理をしたいと思います。群馬・栃木・茨城の食材を探せ!」というように、逆に聞いても面白いですね。
イメージしやすいようにスーパーを例に出しましたが、あくまでも一例です。
スーパー以外にも、空を見上げれば月・星・太陽・天気、街を見渡せば植物・昆虫、台所を探せば酢酸・重曹・塩酸(洗剤)など、受験に出る理科の要素はたくさん転がっています。
これらをネタにクイズを出せば、立派な勉強になります。しかも、子どもにしてみればちゃんと楽しい遊びになるわけです。
「ザイアンス効果」を利用する
日ごろから日常生活の中で様々な受験知識に触れておくと、お子さんは自然といろいろなことを覚えてしまいます。もちろん直接受験で聞かれる内容もあれば、受験で聞かれないただの雑学もありますが、どちらでも構いません。いろいろなことを幅広く知っているということが大切なのです。
なぜなら、人には「知っているものは好きになる」という性質があるからです。これは、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスによって提唱された「ザイアンス効果」としてよく知られています。ブランドでも、認知度が高いものはそれだけで高品質に感じてしまうというのは有名な話です。
あなたのお子さんも、もともと知っていた内容と関連することを学校や塾の授業で見聞きしたら、「あっ、それ知ってる!」「好き!」「楽しい!」となっていきます。
そして、ある程度いろいろなことを知っている得意意識と相まって、授業に自信と興味を持って取り組むようになるでしょう。そうなればしめたもの。小学生の段階で理社が好きになれば、その先の中学・高校での高度な理社も楽しんで学んでくれるようになります。
また、現実的な受験対策ということで考えても、効果は大きいのです。早めに理社の知識を覚えておくと、受験勉強が本格化する5・6年生のときに、学習時間を算数、国語の勉強に投資できます。ですから、算国の成績の向上にも間接的につながってくるわけです。
「勉強は勉強、遊びは遊び」……そこには明確な境界線があると思っていませんか?
もしそうだとしたら、大きな誤解です。心当たりがあるなら、今日からその思い込みを捨ててしまいましょう。なぜなら、その心理的な境界線をなくすだけで、子どもは自分から「やりたい!」と言い出すことがあるからです。
じつは「勉強」と「遊び」は名前が違うだけで、内容に差はありません。
「勉強」=強制されてやるもの
「遊び」=自分からやるもの
そんなイメージの違いがあるだけです。強制されて何かするのは、それが何であれ面白いわけがありません。
根本的な解決策としては、「勉強」に対して強制されるものというイメージを持たせないようにすることです。しかし、それは簡単なことではありません。
「勉強」を「遊び」に変える
そこでオススメなのが、「名前」を変えてしまうことです。つまり、「勉強」に対して、「遊び」というレッテルを貼るのです。
勉強の呼び方を変えるだけなんて意味あるの? そのように疑問に思うのももっともです。勉強内容が面白いか面白くないかは、やってみなければわかりませんが、残念ながら多くの子は、それ以前に見た目や名前から「面白くなさそう」と判断して手に取っていないのです。
だから、まずは手に取らせるための工夫から始めなければいけません。そのためには、「名前」から変えるのが効果的なのです。
実際に世の中には、名前を変えただけで多くの人が手に取ってくれるようになった事例があふれています。例えば、ある靴下は名前を変えただけで売上が17倍に増えました。国内トップの靴下メーカーであるオカモトが、その技術を結集して開発した新商品が2013年に発売されました。
その名も『三陰交をあたためるソックス』。その時はあまり売れなかったので、15年に『まるでこたつソックス』と名前を変えてリニューアルしたところ、売上本数は17倍以上となったのです。
ほかにも、ネピアの高級ティッシュ『鼻セレブ』も、当初の『モイスチャーティシュ』から名前をリニューアルしたことで10倍以上も売上が伸びました。人は名前を変えるだけで、「それ、よさそう」と思ってくれるものなのです。
実際に私たち伸学会の塾生にも、小4にしてすでに勉強ギライをこじらせているS君という子がいました。日頃からお父さんお母さんから「勉強しろ!」と言われ続け、勉強に対して悪いイメージを抱えてしまっていたのです。
塾に来ても「算数をやろう」と言うと、「ヤダ、やらない」と話も聞いてくれません。
そこで、その子に「図形パズルをやろう」と言って同じ問題を渡したところ、「やる!」とあっさり食いつきました。その子がクリアできるレベルで少しずつやらせたところ、だんだん楽しくなってきたようで、すっかり“図形パズル”好きになってくれました。
この「名前リニューアル」は、ご家庭でも簡単にできるテクニックです。なにしろ内容は変えなくてもいいのですから。「算数」は「パズル」に、「理科」や「社会」は「クイズ」に、どんどん名前をリニューアルしていきましょう。
問題の出し方もテレビのクイズ番組のように、楽しく盛り上げればなお効果的です。「デデン♪」と効果音つきで出題するとより楽しいですね。